検体管理のための、バーコードの基礎知識

バーコードによる個体識別は、スーパーマーケットやコンビニでの買い物、コンサートのチケットやクーポンの発行など、いまや我々の生活に欠かせない普遍的な技術となっています。検体管理分野でも、バーコードによる識別はゴールドスタンダードであり、今後もそうあり続けるでしょう。
生産性と確実性を両立させる検体の識別・管理を実現し運用するためには、バーコード技術の理解を深めることが重要です。管理する検体・サンプルのサイズや形状、保有させるべき情報を取り決め、最適なバーコードシンボルをご選択ください。

この記事は、自動認識技術のトータルサプライヤーである アイニックス株式会社 のご協力を得て、同社が編纂されたWebコンテンツを検体管理分野にフォーカスし、再編集したものです。

参考:アイニックス株式会社~自動認識技術/動向

バーコードシンボル

バーコードシンボルは、光学的反射率の高い部分と低い部分との組み合わせ(一般的には黒と白)で情報を表示し、機械的に読取可能にした情報媒体の総称です。
一次元バーコードは、光学的反射率の高い部分と低い部分と、変化する平行かつ長方形のバーまたはスペースの配列によって構成されています。
一次元シンボルは、スタート・ストップコード、データキャラクタ、チェックキャラクタを含むシンボルキャラクタ、クワイエットゾーン、キャラクタ間ギャップ、および他の補助パターンによって構成されます。

クワイエットゾーンは、一次元シンボルの前と後の空白部分のことで、これが少ないとバーコードリーダーは、シンボルの始まりと終わりが認識できないために読み取ることができないため、極めて重要な要素です。
※ GS1 Databarは、二次元シンボルの技術を取り入れ、Databar Limitedを除きクワイエットゾーンなしで読み取ることができます。

チェックキャラクタ(チェックデジットとも言う)は、読み取りの信頼性を向上させるために必要なデータキャラクタで、バーコードリーダーで利用するばかりでなく、ホスト側のデータチェックにも利用されます。

主要な一次元シンボル

Code 39(Code 3 of 9)

1974年にインターメック社が開発したバーコードシンボルで、1994年にJIS-X-0503、1995年にAIM BC1-1995 - USS Code 39、1999年にISO/IEC16388として規格化されました。英数字が使用でき、誤読が少なく信頼性が高いことから、主に産業分野の作業指示書や現品ラベルに使用されています。

Code 128

1981年にコンピュータ・アイデンティクス社が、パソコンの入力対応という要望のため開発したバーコードシンボルで、アスキーコードの128キャラクタを表現できます。Code128の名前は、このキャラクタ数を由来にしています。3種類のスタートコードが用意されており、スタートコードによって表すキャラクタセットが異なっています。これにより128種類のキャラクタを効率良くコード化できる。
情報化密度が高く信頼性も高いことから、流通分野ばかりでなく、産業分野でもCode39に代わって広く使用されるようになってきています。

ポイント

  1. 遠沈管やボトル、フリーズボックスなど十分な貼り付けエリアが確保できている場合は、一次元シンボルの利用が好ましい。ヒューマンリーダブルを配置すれば、コード情報の可視化ができる。
  2. 使用する文字種、最大桁数を十分考慮しておくこと。桁数に応じてバーコード幅が広がるため、ラベル幅に収まらなくなる可能性がある。
  3. 英数字・記号(大文字/小文字混在)、10桁以上になる場合は情報密度の高いCode 128がお勧め。
  4. 短い桁数で、シンプルな英数字(アルファベットは大文字のみ)、記号の場合は読取効率の高いCode 39がお勧め。
  5. バー太さ(エレメント比)は細くしすぎないこと。バーコード幅は狭くできるが、印字カスレや汚れに対して問題が起きやすい。
  6. クワイエットゾーンを正しく確保すること。ラベル幅ギリギリにバーコードを配置したり、バーコードに他のキャラクタを隣接したりすると、読取不良となる。

二次元シンボル

一次元シンボルがシンボルキャラクタを直線的に並べて情報化しているのに対し、情報単位を縦横に配置したバーコードシンボルを二次元シンボル、二次元コード、または、二次元バーコードと呼んでいます。二次元シンボルは、構造的に一次元シンボルを積み重ねたようなマルチロー型(多段型、スタック型とも言う)シンボル体系と主に格子状にデータを配置したようなマトリックス型シンボル体系があります。
二次元シンボルは、英数字なら約2,000字以上、数字なら約3,000桁以上を1つのシンボルにコード化することができます。また、情報化密度が非常に高く、数ミリ四方の極小シンボルも作成できます。更に、仮名や漢字、画像や音声などのバイナリーデータもコード化できるため、汎用的な情報媒体としても利用でき、しかも、紙をベースにしているため非常に低価格のメディアと言えます。

二次元シンボルは、シンボルを構成しているバーやセルが一次元シンボルに比べ非常に小さいことから、汚れや傷の影響を受けやすいと言えます。そこで、近代的な二次元シンボルは、障害により読めなくなったデータや、誤って読み取ったデータを元の正しいデータに復元する誤り訂正機能を備えています。
この誤り訂正レベルを大きく設定すれば、シンボルの半分以上が障害を受けても正しく読み取ることができます。ただし、誤り訂正データが増加する分、シンボルサイズは大きくなり、読取速度が低下します。

主要な二次元シンボル

QR Code

株式会社デンソーが、1994年に開発した二次元コードで、マトリックス型では特に、読み取りの高速化(Quick Response)に配慮したことが大きな特長です。シンボルの3箇所のコーナーに大きなセルとそれを囲む正方形のファインダーパターンを配置することにより、シンボルの切り出しと原点検知、シンボルサイズ検知、そして、傾き検知を高速で行えるようにしています。オリジナル仕様のモデル1、位置補正機能を高め、大容量データにも対応した機能拡張使用のモデル2および大量のデータを必要とせず印字面積を小さく抑えるためのMicro QRCodeの3種類のモデルがあります。
QR Codeは、2次元シンボルとしては後発ですが、国際標準への対応、高速読取ができる等、従来の問題点を解決していること、また、日本で開発されたシンボルであることもあって、日本では広く普及しています。

DataMatrix

アイディマトリックス社が、1987年に開発したマトリックス型の二次元コードで、日本では、データコードと呼ばれている。ECC000、ECC050、ECC080、ECC100、ECC140といった旧バージョンから、1995年に誤り訂正方式を改良し、歪み補正機能を付加したECC200バージョンが現在の普及モデルとなっています。いずれもL字型のアライメントパターン(実線のL字)が特徴で、その対角にL字型にクロックパターン(点線のL字)がマーキングされています。外周内がデータ領域で、セルと呼ばれる点でコード化されています。
DataMatrixは、1996年AIMIのISS規格に登録され、2000年にISO/IEC規格になっています。非常に高い情報化密度から、米国半導体工業会(SEMI)や米国電子工業会(EIA)、米国規格協会(ANSI)で部品のマーキングに採用されています。

ポイント

  1. 情報密度が高く、360度どの方向からでも読み取れるため、マイクロチューブやクライオチューブなどの小型容器に適している。
  2. 誤り訂正が充実しているため、コードの破損・汚れにも十分耐えうるが、可能であればヒューマンリーダブルを配置し冗長しておく方がよい。
  3. QR Codeは日本での普及モデル。スマートフォンの標準カメラアプリでも識別できる。
  4. 情報化密度が高いが、可視化すべき情報はできるだけ文字で表記し、必要な情報だけをコード化すべき。シンボルサイズの肥大化と読取効率に影響をもたらす。
  5. クワイエットゾーンの確保に留意すること。QR Codeは4セル、DataMatrixは1セル必要。
  6. 運用に適した、現実的な読取ができるシンボルサイズは6~8mm角程度(300dpiプリンター)。
  7. 効率的な読取には、バーコードリーダー(スキャナー)の選定が重要。

 

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