検体識別のためのラベルプリンター選定ガイド

研究や生産管理に使用する検体識別ラベルを効果的に運用するためには、印字手段とその特性を理解し、最適なラベルプリンターを選定することが重要です。
この記事では、ラベルの使用目的や毎日印刷するラベル数、印刷する情報の種類と数など、選択を行う際に考慮すべき重要な要素についてご紹介します。

印刷手法の選択

ラベルプリンターの印刷手法

感熱プリンター(Direct Thermal Printers)

感熱プリンターは、熱を加えると色が変化する感熱紙を熱転写ヘッドからの熱を使用して印字する方式です。構造が単純で安価であり、インクリボンを使用しないため消耗品の交換が簡単です。またインクリボンに個人情報が残らないという利点もあります。
ただし、感熱プリンターの印刷出力は、熱、長時間の光、化学薬品、研磨剤、および湿気によって損なわれる可能性があります(スーパーやコンビニのレジで使われるレシートと同じです)。当サイトでは、これらの問題を克服した、短時間のエタノールなどの溶媒耐性のある、超低温対応の特殊ラベルをご用意しています。

熱転写プリンター(Thermal Printers)

熱転写プリンターは、熱転写ヘッドの熱を使用して、リボンからラベルにインクを転写します。 多くの熱転写プリンターは感熱方式と熱転写方式の両方で使用できます。熱転写ラベルは、極端な温度、過酷な化学物質、摩耗、光など、さまざまな条件に対する耐性を提供します。汎用性があり、検体識別用途のゴールドスタンダードと言えます。

DYMOプリンター(DYMO Printers)

DYMOプリンターは、当サイトがお勧めするラボ向けの経済的でポータブルな印刷ソリューションです。印刷方式は感熱プリンターと同様ですが、DYMO互換の専用感熱ラベルでのみ利用できます。熱転写ラベルよりも耐性が一段低くなりますが、当サイトでは耐熱性と耐薬品性が向上した独自のDYMO互換ラベルを提供しています。

RFID対応プリンター(Radio-Frequency IDentification Printers)

RFID対応プリンターは、スマートラベルに包埋されたRFIDチップにデータをエンコード(書き込み)するように特別に設計されています。プリンターは、感熱方式または熱転写方式で印刷して、バーコード、画像やテキストを追加できます。また、データをチェックして正しくエンコードされていることを確認します。RFID対応プリンターでタグへのエンコードを行う場合は、通常BarTenderやCODESOFTのようなラベルデザインソフトウェアを利用します。

オフィスプリンターの利用

レーザー・インクジェットラベルを利用できるオフィスプリンターは、ラベル印刷の良い方法です。ただし、専用のラベルプリンターには、オフィスプリンターにはないさまざまなメリットがあります。熱転写ラベルプリンターは、過酷な化学物質や環境条件に対してはるかに耐性のあるラベルが作成可能です。
専用ラベルプリンターは、必要な数のラベルを正確に印刷でき、高価なインクカートリッジやトナーを必要とせず、接着剤とラベルの素材に関してより多くのオプションを提供します。また、検体管理システムやラベル印刷ソフトウェア、LIMSシステムと連携できる便利なツールでもあります。より良い結果と経済性からも、専用ラベルプリンターは賢明な投資といえるでしょう。

産業用プリンター

産業用プリンターは、大量の連続印刷用に設計されており、耐久性が高いことが特長ですが、通常はサイズが大きくなります。産業用プリンターは、より高い印刷解像度をサポートし、デスクトッププリンターよりも高速かつ鮮明に印刷できます。
1日に500枚未満のラベルを印刷する場合は、デスクトッププリンターが理想的でしょう。 1日に500枚を超えるラベルを印刷する場合は、産業用プリンターを使用することをお勧めします。
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プリンターの対応印字幅と高さ

すべてのプリンターには、印字できる最大の印刷幅と高さがあります。 ほとんどのデスクトップおよび産業用プリンターは最大4”(101.6 mm)の幅で印刷可能ですが、小型プリンター(Zebra TLP 2824 Plusなど)は最大2.24”(56.9 mm)となります。 さらに、ほとんどのプリンターの最小高さは0.5”(12.7 mm)ですが、一部のモデルは0.25”(6.35 mm)の高さの小さなラベルを印刷できます。 印刷するラベルのサイズとご利用になるプリンターの仕様を確認してください。当サイトでは、小型のデスクトッププリンターとして、汎用性の高いMACH1プリンターを推奨しています。
プリンターの印字幅

コアサイズ

感熱プリンター、熱転写プリンターにはラベルロールとインクリボンの巻取り芯(コア)の直径が定義されています。ほとんどの小型デスクトッププリンターでは、1“コア(25~25.4mm直径)が採用されていますので、問題なくご利用いただけます。
産業用プリンターでは、大量のラベルを印字するため、大型の3”コアが一般的です。3"コアではロールあたりのラベル数は1”コアの3倍となります。当サイトでは3”コア製品の情報は掲載していませんが、お取り扱い可能ですので、ご希望の場合はお問い合わせください。
コアサイズ

対応するインクリボン

熱転写プリンターでは、適切な印字結果と用途に応じた耐性を実現するために、正しいインクリボンを選定しなければなりません。当サイトで紹介する識別ラベルには、推奨するインクリボンを明記しています。経済的で一定の溶媒耐性を持つRRクラス、優れた溶媒・化学薬品耐性を持つXARクラスの2種類です。

印字解像度

必要な印刷解像度は、印刷される情報量、ラベルサイズ、バーコードを印刷するかどうかによって異なります。 ほとんどのデスクトップおよび産業用プリンターの解像度は300dpiです。 一部の高性能な産業用プリンターは最大600dpiになります。 バイアルや顕微鏡のスライドなど、テキストやバーコードが詰め込まれた小さなラベルを印刷する場合、少なくとも300dpiをお勧めします。 小さなバーコードや高密度でエンコードされたバーコードは、最適な印刷とその後の可読性の確保のため、より高い解像度を必要とします。
印字解像度の比較-1
印字解像度の比較-2

インターフェイス

プリンターには通常、PCとの簡単な印刷インターフェイスを提供するUSBケーブルが付属しています。 複数のPCをローカルネットワーク(LAN)経由で単一または複数のプリンターに接続できますが、これにはイーサネットポートを備えたプリンターが必要です。 モバイルセットアップが必要な場合は、Wi-FiやBluetoothなどのワイヤレス機能を備えたプリンターを選択するのが理想的です。 設置場所や運用面を考慮して、最適なプリンターをご選定ください。もちろん弊社では最適なご提案をするためのコンサルティングも行っています。
インターフェイス

ソフトウェア

通常、ラベルプリンターを使用して印刷するにはソフトウェアが必要です。 ほとんどのプリンタメーカーは、バーコードを生成したり、情報を印刷するための無料のダウンロード可能なソフトウェアを提供しています。 データソース(Excel、AccessやSQL Serverなど)に接続して高度な自動化印刷を実現するためには、BarTender™やCODESOFTなどの専用ソフトウェアが必要になる場合があります。RFIDプリンターを用いてラベル印字と同時にタグへのエンコードを行う場合も同様です。ご不明な場合は、弊社までお気軽にご相談ください。
印刷ソフトウェア

様々なオプション

それぞれのプリンターには、便利なオプション提供があります。ピーラー(自動剥離)は、ラベルが印刷されるとライナー(台紙)からラベルをきれいに分離し、手で剥離させる際の手間を削減できます。 オートカッターは、印刷時に定義された位置でラベルを自動的にカットできます。 リワインダーを使用すると、印刷されたラベルを新しいロールに巻き戻すことができます。用途と運用に合わせて適切なオプションを選択されることをお勧めします。

バーコードリーダー

検体を取り違えなく確実に識別する方法として、バーコードは最も効果的な手法です。現在、大別して一次元と二次元の二種類がありますが、検体容器は総じて小さく、サンプル名や有効期限などのテキスト情報とバーコードを共に印字するために、スペースが限られる場合があります。
二次元バーコードは、この問題を解決する有効なフォーマットです。DataMatrixやQRコードといった、普及モデルのシンボルは広く利用されており、ほとんどのバーコードリーダーで対応可能です。
もし印字解像度300dpiのプリンターで二次元バーコードを印字する場合は、エンコードする文字列のサイズ(文字数)に考慮し、各辺を6~7mm以上のサイズにすることをお勧めします。
2Dバーコード
バーコードリーダーの多くはUSB接続できるもので、キーボード代替入力(HID)として利用できます。バーコードリーダーの読み取り能力は、価格に応じて多岐にわたりますが、当サイトでは様々な検証を行い、検体識別にマッチする高性能で、コストパフォーマンスの高い機種を紹介しています。
バーコードリーダーは、ハンズフリースタンドを利用すれば、バーコードシンボルをかざすだけで読取が可能です。また、Bluetoothタイプを使用すれば、USBケーブルの長さを気にすることなく読取処理が行えます。運用と一度に処理される数、設置場所を考慮し、適切なモデルをご選択ください。
※ QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
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